開国五十年史

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開国五十年史
編集者 伯爵 大隈重信 撰
編集兼発行者 副島八十六
著者 大隈重信、伊藤博文、松方正義、山縣有朋、西園寺公望など65名
発行日 日本の旗 日本 上巻 1907年12月25日、下巻 1908年2月29日、附録 1908年10月18日
清の旗 1909年9月19日
イギリスの旗 イギリス 1909年
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 1909年
発行元 開国五十年史発行所
ジャンル 歴史書
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 上製本
ページ数 日本の旗 日本 上巻 1052、下巻 1078、附録 474
清の旗 1368
イギリスの旗 イギリス I 646、II 616
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 I 646、II 616
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開国五十年史』(かいこくごじゅうねんし、中国語: 開國五十年史、英語: Fifty Years of New Japan )は、大隈重信が撰した日本歴史書1907年明治40年)から1908年(明治41年)にかけて上下巻・附録の全3冊が、1909年(明治42年)に漢文版・英文版が刊行された[注釈 1]。当時の権威者に各分野の執筆を委嘱し[2]、それまでにない総合的日本近代史と言える広範囲な分野別史書となっている[3]

概要[編集]

開国の契機となった1853年嘉永6年)のペリー来航から、1904年(明治37年)の日露戦争開戦までの50年間の日本の近代化の過程を[注釈 2]、国内外に知らしめるために、各分野につきそれぞれの専門家政治家実業家研究家芸術家など)により執筆されている。

出版までの経緯[編集]

1904年、英文新誌社の雑誌『The Student』において、ペリー来航から満50年を経過したことを記念して、開国以来の日本の進歩を海外諸国に知らしめるために、諸名士の執筆したものを英文に訳し、大隈重信監修の下で“ANGLO-AMERICAN INFLUENCE IN JAPAN”(『開国五十年』)という本を出版する計画が生まれる[5][注釈 3]。5月までに発行するという当初の計画が遅れ、代わりに『The Student』の特別二倍号が5月1日に出版される[7]。その後、英文新誌社から分離した事業として「開国五十年編纂所」が別に設置され、編纂作業が続けられる[8]

漢文版[編集]

漢文版は醇親王慶親王粛親王鹿伝霖袁世凱徐世昌などの題辞・序文を付記した上で、邦文版と同様に「開国五十年史発行所」から出版される[9]

副島八十六を派遣して清国皇帝に献呈する[10]。この書の献呈により、1909年12月17日、大隈は清国皇帝から「頭等第三宝星」を授けられる[11][12]

1929年北京商務印書館から「万有文庫漢訳世界名著叢書」の1つとして、題名を『日本開國五十年史』に改め、13冊に分冊して再版される[9]

英文版[編集]

1906年頃から英文版出版のための出版社の選定が始まり、数社を経て1909年1月22日スミス・エルダー商会(Smith, Elder & Co.)及び英訳校正者のマルクス・B・ハイシュ英語: Marcus Bourne Huishとの契約が交わされ、同年1月27日、大隈に柳谷卯三郎からその契約書が送付される[13]

1909年、イギリスにおいてロンドンのスミス・エルダー商会から、アメリカではニューヨークダットン商会英語: E. P. Duttonから出版される[13][14]。同年11月15日、イギリスにいる小野英二郎から大隈に「英米両国に於ける開国五十年史の売行頗る宜しく、出版社は初版発送即日再販に着手」という電報が届く[13]

英国皇帝エドワード7世英国首相ハーバート・ヘンリー・アスキス、第26代大統領セオドア・ルーズベルトを始めとする欧米の元首、政治家などに献呈する[1]

その他[編集]

  • 1904年3月31日日米和親条約が締結された1854年3月31日(嘉永7年3月3日)から満50年を経過したことを紀念して、開国開港五十年記念事業の一環として、『開国五十年史』の刊行に先駆けて「開国五十年紀念祝賀会」が開催される[15]
  • 1907年11月18日、大隈邸において「開国五十年史完成披露園遊会」が開催される[16]
  • 大隈の文明運動の一環として[注釈 4]、『開国五十年史』の姉妹篇(副産物)となる『国民読本』(1910年3月、丁未出版社)及び『開国大勢史』(1913年4月、早稲田大学出版部)が刊行される。『国民読本』は、海外に向けて著作された『開国五十年史』を元に日本国民に向けて書かれたものであり、『開国大勢史』は日本の文明史を著述した『開国五十年史』を元に文明が生まれるまでの経路を回顧して書かれたものである[18]
  • 矢内原忠雄編『現代日本小史』の「総説」において、「近代日本小史として本書の先駆をなすものは、伯爵大隈重信撰『開国五十年史』である。」と紹介される[19]
  • 2016年4月19日から6月19日まで、日比谷図書文化館において特別研究室企画展示「『開国五十年史』に見る明治日本の国づくり自己評価 ~総論・政治・経済編~」が開催される[20]
  • 稿本の一部や編集日誌など11部14冊が『開国五十年史草稿』として筑波大学附属図書館に収蔵されている[21][22]

構成[編集]

邦文版[編集]

出版前の広告などでは、巌本善治「婦人の社会事業」、アーサー・ロイド「教育上に於ける泰西の感化」、新渡戸まり子「家庭」、都築馨六「日欧米人間の社交」、津田梅子「女子教育」、下田歌子「上流社会の女子教育」、物集高重「図書の沿革」などを本書の項目として紹介しているが[23]、英文版で収録された都築馨六を除き、実際に出版されたものには収録されていない。

上巻[編集]

下巻[編集]

附録[編集]

漢文版[編集]

邦文版の上・下巻をほぼ同じ内容構成で1冊に纏めて出版された[9]

英文版[編集]

全2巻。邦文版と章立てが大きく変わり[注釈 5]、邦文版の図版は挿入されず、附録篇は出版されていない[13]

書誌情報[編集]

邦文[編集]

  • 伯爵大隈重信撰編 『開國五十年史 上卷』 開國五十年史發行所、1907年12月。NDLJP:991350 
  • 伯爵大隈重信撰編 『開國五十年史 下卷』 開國五十年史發行所、1908年2月。NDLJP:991351 
  • 伯爵大隈重信撰編 『開國五十年史 附録』 開國五十年史發行所、1908年10月。NDLJP:991352 

復刻版[編集]

  • 伯爵大隈重信撰編 『開国五十年史(全二巻)上巻』第150巻 原書房〈明治百年史叢書〉、1970年11月。 ISBN 9784562002412 
  • 伯爵大隈重信撰編 『開国五十年史(全二巻)下巻』第151巻 原書房〈明治百年史叢書〉、1970年11月。 ISBN 9784562002429 

抄録[編集]

大隈重信の『開国五十年史論』と『開国五十年史結論』が収録されている。

漢文[編集]

  • 伯爵大隈重信撰編 『開國五十年史』 開國五十年史發行所、1909年9月。NDLJP:773216 

万有文庫[編集]

  • 大隈重信等、王雲五編、 『日本開國五十年史』一巻 商務印書館〈萬有文庫〉、1929年。 
「序論」、「徳川慶喜公回顧録」を収録。
  • 大隈重信等、王雲五編、 『日本開國五十年史』二巻 商務印書館〈萬有文庫〉、1929年。 
「帝国憲法制定之由来」、「開国事歴」、「明治之外交」、「帝国財政」を収録。
  • 大隈重信等、王雲五編、 『日本開國五十年史』三巻 商務印書館〈萬有文庫〉、1929年。 
「陸軍史」、「陸軍史」、「政党史」を収録。
  • 大隈重信等、王雲五編、 『日本開國五十年史』四巻 商務印書館〈萬有文庫〉、1929年。 
「法制史略」、「法制一斑」、「自治制度」、「警察制度」、「監獄誌」を収録。
  • 大隈重信等、王雲五編、 『日本開國五十年史』五巻 商務印書館〈萬有文庫〉、1929年。 
「交通及通信」、「逓信事業」、「鉄道誌」、「海運業」を収録。
  • 大隈重信等、王雲五編、 『日本開國五十年史』六巻 商務印書館〈萬有文庫〉、1929年。 
「本邦教育史略」、「明治教育史要」、「民間教育事業」、「商業教育」、「女子教育」を収録。
  • 大隈重信等、王雲五編、 『日本開國五十年史』七巻 商務印書館〈萬有文庫〉、1929年。 
「数物学」、「博物学」、「医術之発達」、「神道」を収録。
  • 大隈重信等、王雲五編、 『日本開國五十年史』八巻 商務印書館〈萬有文庫〉、1929年。 
「儒教」、「仏教」、「基督教」、「哲学思想」、「泰西思想之影響」を収録。
  • 大隈重信等、王雲五編、 『日本開國五十年史』九巻 商務印書館〈萬有文庫〉、1929年。 
「明治之文学」、「美術小史」、「音楽小史」、「国劇小史」を収録。
  • 大隈重信等、王雲五編、 『日本開國五十年史』十巻 商務印書館〈萬有文庫〉、1929年。 
「新聞紙雑誌及印行事業」、「農政及林政」、「水産業」、「鉱業誌」を収録。
  • 大隈重信等、王雲五編、 『日本開國五十年史』十一巻 商務印書館〈萬有文庫〉、1929年。 
「工業誌」、「織布誌」、「銀行誌」を収録。
  • 大隈重信等、王雲五編、 『日本開國五十年史』十二巻 商務印書館〈萬有文庫〉、1929年。 
「会社誌」、「外国貿易」、「慈善事業」、「赤十字事業」を収録。
  • 大隈重信等、王雲五編、 『日本開國五十年史』十三巻 商務印書館〈萬有文庫〉、1929年。 
「都府之発達」、「風俗之変遷」、「社会主義」、「日本人之体格」、「国語略史」、「開国五十年史結論」、「開国五十年史補遺」を収録。

英文[編集]

イギリス(ロンドン)[編集]

  • COUNT SHIGÉNOBU ŌKUMA, ed. (1909), FIFTY YEARS OF NEW JAPAN (KAIKOKU GOJŪNEN SHI), VOLUMEⅠ, MARCUS B. HUISH, SMITH, ELDER & CO. 
  • COUNT SHIGÉNOBU ŌKUMA, ed. (1909), FIFTY YEARS OF NEW JAPAN (KAIKOKU GOJŪNEN SHI), VOLUMEⅡ, MARCUS B. HUISH, SMITH, ELDER & CO. 

アメリカ(ニューヨーク)[編集]

  • COUNT SHIGÉNOBU ŌKUMA, ed. (1909), FIFTY YEARS OF NEW JAPAN (KAIKOKU GOJŪNEN SHI), VOLUMEⅠ, MARCUS B. HUISH, E.P. DUTTON & COMPANY 
  • COUNT SHIGÉNOBU ŌKUMA, ed. (1909), FIFTY YEARS OF NEW JAPAN (KAIKOKU GOJŪNEN SHI), VOLUMEⅡ, MARCUS B. HUISH, E.P. DUTTON & COMPANY 

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 独訳版の刊行も計画されたが実現しなかった[1]
  2. ^ 項目によってはそれ以前の時代から記述しているものや、執筆者の自伝的な要素が含まれているものもある[4]
  3. ^ 『大隈侯八十五年史』では、大隈が『開国五十年史』の監輯を思い立った契機について、1903年秋に巌本善治等が『英米両国の文明が日本に及せる影響』(“Anglo-American influence upon Japanese Civilization”)と題した本を書く際に、大隈にその編集総裁を依頼したことに起因したとある[6]
  4. ^ 「文明運動」とは大隈の行った文化的活動の総称を指す[17]
  5. ^ 田中不二麿「教育瑣談」、加藤弘之「高等教育」、大槻如電「欧洲学術伝来史」、横井時雄「新日本智識上の革新」、福地源一郎「政論界に於ける新聞紙」、高橋義雄「染織業」、エルウヰンベルツ「日本人の体格」の7篇が削除され、第2巻第25章に都築馨六の“SOCIAL INTERCOURSE BETWEEN JAPANESE AND OCCIDENTALS”(日欧米人間の社交[23])が収録される[13]

出典[編集]

  1. ^ a b 「著書に対する反響」『大隈侯八十五年史』第貳卷、大隈侯八十五年史編纂會、1926年12月、653-656頁。
  2. ^ 「開国五十年史」『日本近代史料解説』佐治芳雄、宗高書房、1983年6月、183-184頁。
  3. ^ 佐藤能丸「開国五十年史」『明治時代史大辞典』第一巻、吉川弘文館、2011年12月、463頁。 ISBN 9784642014618
  4. ^ a b c d 發行者「例言」『開國五十年史』上卷、開國五十年史發行所、1907年12月、1-6頁。
  5. ^ 「開國五十年(英文新誌の一大事業)」『The Student』第1巻第14号、英文新誌社、1904年1月15日、 27頁。
  6. ^ a b 「『開国五十年史』の編著とその苦心」『大隈侯八十五年史』第貳卷、大隈侯八十五年史編纂會、1926年12月、649-653頁。
  7. ^ 「EDITOR'S DESK」『The Student』第1巻20-21、英文新誌社、1904年5月1日、 59-60頁。
  8. ^ 「EDITOR'S DESK」『The Student』第2巻第2号、英文新誌社、1904年7月15日、 56頁。
  9. ^ a b c 孔穎「第三編 清末中国語訳された日本監獄学書籍の動向 第一章 清末中国語訳された日本監獄学書籍の書目 四 百科全書類の日本監獄学訳書 (二)第35の小河滋次郎・留岡幸助著『開國五十年史 監獄誌』(1909年)」『中国の監獄改良論と小河滋次郎』清文堂、2015年3月、221-227頁。 ISBN 9784792410384
  10. ^ 「翻訳『大隈伯の開国五十年史』の影響」『実業之世界』第7巻第5号、実業之世界社、1910年3月1日、 74頁。
  11. ^ 孔穎「第三編 清末中国語訳された日本監獄学書籍の動向 第三章 清末中国語訳された日本監獄学書籍の伝播 五 清国皇帝及び高官への贈呈」『中国の監獄改良論と小河滋次郎』清文堂、2015年3月、263-266頁。 ISBN 9784792410384
  12. ^ 賞給頭等第三宝星執照 : 大日本国伯爵大隈重信”. 2019年4月29日閲覧。
  13. ^ a b c d e 泉正人「英版『開国五十年史』出版の経緯」『早稲田大学史記要』第21巻、早稲田大学史編纂所、1989年3月31日、 141-176頁。
  14. ^ 関田かおる「大隈と『開国五十年史』」『エピソード大隈重信 125話』監修者 奥島孝康中村尚美、早稲田大学出版部、1989年7月、118-121頁。 ISBN 9784657897213
  15. ^ 佐藤能丸「開国開港五十年記念事業」『明治時代史大辞典』第一巻、吉川弘文館、2011年12月、462-463頁。 ISBN 9784642014618
  16. ^ 「大隈伯邸観菊会 開国五十年史完成披露」『東京朝日新聞』第7633号、1907年11月19日、4面。
  17. ^ 真辺将之「大隈重信の文明運動と人生一二五歳説」『早稲田大学史記要』第44巻、早稲田大学史編纂所、2013年2月28日、 37-69頁。
  18. ^ 柳田泉「Ⅳ 明治文明史における大隈 23 文明運動(三)著述」『明治文明史における大隈重信』早稲田大学出版部、1962年10月、397-412頁。
  19. ^ 矢内原忠雄「総説 二 『開国五十年史』」『現代日本小史』上、編者・矢内原忠雄、みすず書房、1952年4月、10-15頁。
  20. ^ 平成28年4月20日 特別研究室企画展示「開国五十年史」に見る明治日本の国づくり自己評価~総論・政治・経済編~ (PDF)”. 千代田区立日比谷図書文化館 (2016年4月20日). 2019年4月29日閲覧。
  21. ^ 「『開国五十年史草稿』」『筑波大学附属図書館報』第7巻第1号、筑波大学図書館部、1981年7月15日、 7-8頁。
  22. ^ 「開国五十年史草稿 一一部 一四冊」『筑波大学和漢貴重図書目録』筑波大学附属図書館、1996年3月、13-14頁。
  23. ^ a b 「文芸消息 開国五十年史」『早稲田文学』五月之巻、早稲田文学社、1906年5月1日、 18-19頁。
  24. ^ 水産業ノ発達 - CiNii
  25. ^ 鑛業 - CiNii
  26. ^ 日本工業史要 - CiNii
  27. ^ 日本ノ外国貿易及将来 - CiNii
  28. ^ 開国五十年ノ北海道ノ進歩 - CiNii
  29. ^ 岸本英太郎「凡例」『明治社会主義史論』青木書店青木文庫〉、1955年4月、5-6頁。
  30. ^ 正本開国五十年年表 - CiNii

外部リンク[編集]