鐘
鐘(かね、英: bell)は、音を出す金属製の器具。日本語の「鐘」は狭義には叩いたり撞(つ)いたりして音を出すもので、内部に装着した舌(ぜつ)などを振動させて音を出す鈴と区別する[1]。広義には内部にぶら下げた舌(ぜつ)という分銅を振動させて音を出す器具も含めて「鐘」という[1][2]。
概要[編集]
古代から鐘、銅鑼、太鼓などの同じグループの打楽器として宗教的儀式などに用いられてきた[2]。世界的にみられることから技術や文化の比較に好適な資料となっている[1]。
構造には地域差があり、日本の鐘(和鐘)は撞木(しゅもく)で叩くか撞くことによって鳴らすものが一般的なのに対し、西洋の鐘(洋鐘)は内部にぶら下げた舌(ぜつ)という分銅で内面を叩いて音を出すものが一般的である[2]。
古く日本では嵐を呼ぶという迷信があり鐘を船に乗せることは避けられた[2]。西洋では航海に布教の目的もあったためコロンブスやマゼランは船に多くの鐘を積み込んでいた[2]。船鐘はもともと宗教的なものだったが砂時計とともに船内の時計代わりに利用されるようになった[2]。なお、英語では時鐘の場合はstrike(打つ)を用いるが、号鐘の場合はring(鳴らす)を用いる[2]。
東洋の鐘[編集]
東洋の寺社の梵鐘は大型の鐘では建物に吊るした撞木を人間が揺り動かして撞いて音を鳴らす。
和鐘[編集]
日本の鐘を和鐘という[1]。和鐘は構造上口径が狭く音色が重厚で、長い余韻を残すのが特徴である[2]。
縄文時代には既に土鈴(どれい)と呼ばれる音を出す用途を意図して作られた器物が存在した。弥生時代の遺跡から出土する銅鐸も鐘の類である。『日本書紀』では崇峻天皇の元年(588年)に百済から鋳造に詳しい鑪盤博士が渡来したという[1]。
和鐘で代表的なものは梵鐘と半鐘である[2]。梵鐘は寺院での朝夕の勤行の合図に用いられた[2]。半鐘は火の見櫓などの早鐘に用いられたもので宗教的な要素はない[2]。
中国鐘[編集]
中国の鐘(中国鐘)には多彩な鋳造方法があったとみられている[1]。日本の和鐘は中国の南北朝時代の蝋型法が原型になっているとされる[1]。
西洋の鐘[編集]
洋鐘[編集]
西洋式の鐘を洋鐘といい内部にぶら下げた舌(ぜつ)という分銅を振動させて音を出すものが多い[2]。一般に、西洋の教会にみられる鐘や、西洋式の軍艦の合図に用いられる鐘はこのタイプである。近代以降は機械仕掛けにして舌または外身を動かすことにより音を鳴らすことも行われる。日本ではキリスト教伝来後に教会を南蛮寺と呼んだことから洋鐘を南蛮鐘ということもあり現存する寺院もある[2]。
洋鐘は構造上口径が広いため音色は明るく、和鐘に比べて余韻をあまり残さないのが特徴である[2]。
鐘を並べることで複数の音が出せるようにしたものにカリヨン、編鐘、ハンドベルなどがある。
楽器としての利用[編集]
楽器の分類としては、鐘は体鳴楽器に属する。
オーケストラや吹奏楽の楽譜に「鐘」(英: bells, chimes、独: Glocken、仏: cloches、伊: campane; いずれも複数形)とある際に使われる楽器には、チューブラーベルやウィンドチャイムなどがある。どちらもお椀型の外身はもたず、前者は長さの異なる中空の管をいくつも音階を持つように並べてそれをハンマーで叩いて音を出すもの、後者は長さのことなる金属棒を数十本ならべてそれをビーターで揺らすことで音を奏でるものである。
楽曲の一例として、ベルリオーズの幻想交響曲や、チャイコフスキーの序曲1812年の鐘が広く知られるが、いずれも本物の教会の鐘を使った録音がある。